松田聖子 スコールのアルバムがいい~大村雅朗 最高アレンジ SQUALL
3曲め「SQUALL」。イントロは無いが歌い始める前に
大きなブレス(息を吸う音)
こんなに胸ときめいた “イントロ”はなかなか無い
エレピとヴォーカルだけのスローで静かな歌い出し。
そこから一転、雷の様なドスンドスンとした
アレンジでロックが始まる。
ホーンやストリングスも 大々的にフィーチャー
この曲のアレンジャーはB面3曲め「青い珊瑚礁」の
見出された新進気鋭の大村は遠慮無くロックしていく。
「♪ Oh,スコール」の部分でのこだまの様なエコーと
ダブルヴォーカル、これは小田の発案らしいが、サビで
左右に分かれるダブルヴォーカル、名ギタリスト
松原正樹の ソロを大胆にフィーチャーしたストリングスも
劇的な間奏。 攻めっ攻めだった。
松田聖子のヴォーカルもそれに呼応するが
如く攻めてくる。吠えるとも称される高音は
言うまでもないが、このアルバム全体に通じる
意図してか否かビブラートのかかる低音がまた
印象的だ。「♪ 砂が燃えるわ」「♪ 海が燃えるわ」は
特に聴きもの。 これほどジャンプ感のある
松田聖子の ロックナンバーは無い。
40年経っても胸躍る。 アルバムタイトル曲が
このクオリティ。 3曲めにして『SQUALL』は
勝利を握りしめたも同様だった。
大村はB面1曲めの「ロックンロール・デイドリーム」と
5曲めでクロージング・ナンバーの「潮騒」も編曲。
前者ではロック担当とばかりピアノとホーンと
コーラスをフィーチャーしたゴージャスな
ロックンロールを聞かせ、後者では一転、
抑制された 音数の少なめなアレンジでしっとりと聞かせる。
(1981~83年)のエンディングテーマとしてもお馴染みだ。
大人路線担当「ダンシング・オールナイト」の松井忠重
「SQUALL」に続く4曲め「トロピカルヒーロー」
このミドルナンバーのアレンジャーは松井忠重。
この年の大ヒット曲「ダンシング・オールナイト」を
もんた&ブラザースと共に編曲したのが起用理由
だったのだろうか。フルートが印象的な、レゲエ風の
抑制の効いた音数の少なめなアレンジで大人っぽさを
演出している。
B面2曲めの「クールギャング」も松井の
アレンジで、テンポは少しアップするが、ホーンを
フィーチャーしながらもやはり音の空間を生かし
クールにまとめられている。
刻み込むような ギターの音が実にユニーク。
松井アレンジの2曲は信田、大村とはかなり タッチが
異なり大人路線。このギアチェンジは 見事という他ない。
しかし松井は次作以降、 松田聖子のアルバムに
現れることは無かった。